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店舗・工場が休業したら利益は補償される?休業損失補償(利益保険)の基本

火災や水災などで店舗や工場が被害を受けたとき、建物や設備の修理費用は火災保険などでまかなえる場合があります。しかし、営業できない間の売上の減少や、仮店舗を借りる費用、従業員の給与などの支払いは、物の損害とは別の問題です。
こうした「休業中の損失」に備える補償が、休業損失補償(利益保険、事業中断保険とも呼ばれます)です。日本損害保険協会も、火災などによる休業で利益が減少するリスクとして紹介しています。
この記事では、休業損失補償が補償するもの、保険金の算出の考え方(損保ジャパンの商品を例にします)、補償されない場面、保険証券で確認したいポイントを整理します。
この記事でわかること
- 建物・設備の修理費用と、休業中の利益の損失は、別の補償で考える
- 休業損失補償が対象とする費用の種類(休業損失・営業継続費用・損害防止費用)
- 保険金の算出の考え方と、補償される期間・日数の確認ポイント
- 補償されない場面(地震・噴火・津波など)と、商品による違い
- 保険証券で確認したいチェックリスト
結論|物の損害の補償と、休業中の損失の補償は別のもの
火災保険は、建物・設備・什器・商品などの「物」の損害に備える保険です。一方、事故のあとに営業できなくなり、売上が減る損失は、物の損害の補償だけではカバーされない場合があります。
休業中の損失に備える補償は、保険会社によって「利益保険」「事業中断保険」「休業損失補償」などと呼ばれます。チャブ損保の解説では、利益保険は事業中断保険と同じ種類のもので、保険会社が提供する商品によって呼び方が異なるとされています。
また、補償の前提は、補償の対象となる建物や設備などが損害を受け、その結果として事業が中断することです。つまり、物の損害が補償の起点になります(チャブ損保「利益保険および補償の基本について」)。
| 損失の種類 | 主な備え方(一般論) |
|---|---|
| 建物・設備・什器・商品の修理・再取得費用 | 火災保険(財物補償)で補償される場合があります |
| 営業できない間の売上・利益の減少 | 休業損失補償(利益保険・事業中断保険)で補償される場合があります |
| 仮店舗の借用など、営業を続けるための費用 | 営業継続費用の補償で補償される場合があります |
| 取引先の倒産による代金の回収不能 | 取引信用保険など、別の保険で備える種類の損失です |
注記:補償の範囲や名称は、保険会社・商品によって異なります。契約している保険の約款・重要事項説明書で確認してください。
どんな場面で休業の損失が生じるのか
日本損害保険協会は、事業中断・利益減少のリスクとして、工場の火災による休業、店舗や商品の水災(浸水)による休業、食中毒の発生による休業などを挙げています。
協会のページでは事例として、次の2つが紹介されています。
- 建物内の出火で建物・設備・什器が焼損し、修理期間中の営業休止を余儀なくされ、約1,000万円の損害が生じた事例
- 店内で食中毒が発生し、保健所から営業停止の行政措置を受け、約400万円の損害が生じた事例
事例の金額は、あくまで一例
上の金額は、協会のページに事例として示されたものです。実際の損失は、事業の規模、休業の長さ、固定費の水準などによって大きく変わります。自社の場合にどの程度の損失が想定されるかは、売上や費用の状況をもとに個別に検討する必要があります。
休業損失補償が補償するもの
日本損害保険協会のページでは、休業補償保険の補償内容として、次の3つが紹介されています。火災・水災などの偶然の事故で建物や設備に損害が生じて休業した場合の、利益の損失や各種費用を補償する保険という位置づけです。
| 補償の種類 | 内容 |
|---|---|
| 休業損失 | 休業によって減少した収益(利益)の補償 |
| 営業継続費用 | 仮店舗の借用など、営業を続けるためにかかった費用の補償 |
| 損害防止費用 | 損害の発生・拡大を防ぐために支出した費用の補償 |
注記:日本損害保険協会が紹介する一般的な補償内容です。補償内容・保険料・支払限度額は保険会社ごとに異なります。食中毒や感染症による休業を補償する商品もありますが、すべての商品にあるわけではありません。
チャブ損保の解説にみる補償の対象
チャブ損保の解説では、営業利益のほか、不動産ローンや賃貸料、リース料の支払い、従業員の給与、移転費用などが、利益保険の補償対象として挙げられています。営業継続費用は、別の補償または特約として扱われる場合があるとされています。
どの費用が対象になるかは、契約によって異なります。「家賃や人件費は補償されるのか」といった点は、保険証券と約款で確認する必要があります。
保険金はどう決まるのか|損保ジャパンの商品を例に
保険金の算出方法は、会社・商品によって異なります。ここでは、損害保険ジャパンの「企業総合補償保険(2025年10月版)」のあらましに記載された内容を例に、考え方を整理します。同じ名称の特約でも、他社の商品では内容が異なる場合があります。
この商品の休業損失補償条項では、保険金は次の①と②の合計額とされています。
- ①「保険金額×休業日数」で算出した額(ただし、復旧期間内の売上減少高に支払限度率を乗じた額から、復旧期間内に支払いを免れた経常費等を差し引いた残額が限度)
- ②休業日数を減少させるために支出した必要かつ有益な追加費用(減少できた休業日数に保険金額を乗じた額が限度)
| 確認ポイント | 損保ジャパンの商品(例)での扱い |
|---|---|
| 休業日数 | 復旧期間内の休業日数。定休日は含みません |
| 補償される期間の上限 | 契約時に約定した「約定復旧期間」が上限 |
| 補償が始まる日 | 風災・雹災・雪災および水災の事故では、休業2日目以降が補償の対象 |
| 支払いの上限 | 売上減少高に支払限度率を乗じた額から、支払いを免れた経常費等を差し引いた残額が限度 |
注記:損保ジャパン「企業総合補償保険のあらまし」(2025年10月版)の記載をもとにした整理です。免責の日数、約定復旧期間、支払限度率などの設定は、契約内容によって異なります。
「待機期間」と「てん補期間」の考え方
チャブ損保の解説では、損害が発生してから補償が始まるまでの日数を「待機期間(免責期間)」、事業を復旧する間、営業利益と費用が補償される期間を「復旧期間(責任期間、てん補期間)」と説明しています。復旧期間は契約によって特定の日数に制限されるのが一般的ですが、延長できる場合もあるとされています。
実際の復旧に必要な期間は、被害の規模や設備の調達状況によって変わります。そのため、契約で定める期間が、自社の想定する復旧期間に足りているかを確認することが大切です。
自社が被害を受けなくても、休業になることがある
休業の原因は、自社の建物の損害だけとは限りません。損保ジャパンの商品の例では、自社の保険の対象だけでなく、隣接する物件や、配管・配線でつながっている敷地外のユーティリティ設備が損害を受けて、営業が休止または阻害された場合も、補償の対象となる条件が示されています。
ただし、この扱いは商品や特約によって異なります。「近隣の被害による休業」や「電気・ガス・水道などの供給停止による休業」がどこまで補償されるかは、約款で確認が必要です。
補償されない場面と、注意したい点
損保ジャパンの商品の例では、財物補償・休業損失補償に共通する免責事由として、次のようなものが挙げられています。
- 契約者・被保険者の故意、重大な過失、法令違反
- 戦争・内乱・暴動
- 地震・噴火、またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没・流失
- サイバー攻撃等の結果として生じた事故(保険の対象に火災・破裂・爆発が生じた場合を除く)
地震による休業は、別に確認が必要
地震・噴火・津波を原因とする損害は、一般的な火災保険と同様に、休業損失補償でも免責とされている商品があります。地震による休業への備えが必要かどうかは、地震リスクの補償とあわせて確認します。地震リスクの扱いは、法人の火災保険で地震は補償される?事業用建物の地震リスクへの備え方で解説しています。
補償の起点は「物の損害」であることが多い
チャブ損保の解説では、利益保険は、補償の対象となる資産が損害を受けた結果として生じた事業中断の損失が補償されるのが一般的だとされています。そのため、物の損害を伴わない休業(たとえば、物的な損害のない営業停止)がどこまで補償されるかは、商品によって異なります。
休業の損失への備えを考えるときのポイント
休業中の損失への備えが必要かどうかは、事業の内容や資金の状況によって異なります。判断のために、次の点を整理してみてください。
- 営業を止めたとき、毎月発生し続ける支払い(家賃・給与・リース料・借入返済など)はどれくらいか
- 営業再開までに、どれくらいの期間がかかる可能性があるか(設備の調達や修理の期間を含む)
- 仮店舗や代替の生産体制を用意できるか、その費用はどの程度か
- 手元の資金や、借入などで、休業中の資金繰りをどこまでまかなえるか
- 火災・水災・風災のうち、自社の立地でどのリスクが大きいか
保険証券で確認したいチェックリスト
次の項目を、保険証券と約款を手元に置いて順に確認してみてください。
- ☐ 火災保険などの契約に、休業損失・利益保険・営業継続費用の補償が付いているか
- ☐ 補償される事故(火災・風災・水災・盗難・電気的事故など)の範囲を把握しているか
- ☐ 補償が始まるまでの日数(免責の考え方)と、補償される期間の上限を把握しているか
- ☐ 保険金額や支払限度額が、現在の売上・固定費の水準と合っているか
- ☐ 隣接物件・ユーティリティ設備の損害による休業が、補償の対象かどうか確認したか
- ☐ 地震・噴火・津波による休業の扱い(対象外かどうか)を確認したか
- ☐ 事業の拡大・移転・設備投資のあとに、保険金額や補償内容を見直しているか
まとめ|休業の損失は、物の補償とは別に確認する
火災保険などで建物や設備の損害が補償されても、営業できない間の利益の損失や、営業を続けるための費用は、別の補償でないと備えられない場合があります。休業損失補償(利益保険)は、そうした損失に備える保険のひとつです。
補償の有無や、補償される期間・日数、支払いの上限は、保険会社や商品によって異なります。まずは保険証券と約款で、休業中の損失がどう扱われているかを確認してみてください。判断に迷う場合は、保険代理店などの専門家にご相談ください。
参考にした資料:日本損害保険協会「企業のための保険ナビ 事業中断・利益減少のリスク」、損害保険ジャパン「企業総合補償保険のあらまし(2025年10月版)」「事業休止の保険」、チャブ損保「利益保険および補償の基本について」。
よくある質問
- Q. 火災保険に入っていれば、休業中の売上の減少も補償されますか?
- A. 火災保険の基本補償は、建物・設備・商品などの物の損害が中心です。休業中の利益の損失や営業継続費用は、休業損失補償(利益保険)などの別の補償が付いている場合に対象となります。契約内容は商品によって異なるため、約款で確認してください。
- Q. 利益保険と事業中断保険は違うものですか?
- A. チャブ損保の解説では、利益保険は事業中断保険と同じ種類のもので、保険会社が提供する商品によって呼び方が異なるとされています。「休業損失補償」という名称で提供される場合もあります。
- Q. 休業損失補償は、いつから、いつまで補償されますか?
- A. 商品によって異なります。損保ジャパンの企業総合補償保険の例では、風災・雹災・雪災・水災の事故の場合は休業2日目以降が対象で、補償される期間は契約時に約定した約定復旧期間が上限です。具体的な日数は契約ごとに設定されます。
- Q. 地震で営業できなくなった場合も補償されますか?
- A. 地震・噴火・津波を原因とする損害は、免責事由とされている商品があります。地震による休業への備えが必要かどうかは、地震に関する補償とあわせて、保険会社・代理店に確認してください。
- Q. 食中毒や感染症による休業も補償の対象ですか?
- A. 日本損害保険協会のページでは、食中毒や感染症による休業を補償する商品もあると紹介されています。すべての商品が対象とは限らないため、補償の範囲を確認してください。
いまの契約で、休業中の損失がどう扱われているか不安な場合は、保険証券をもとに補償内容を整理できます。
法人の損害保険を相談する※ 本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務・法務判断については、税理士・弁護士等の専門家にご確認ください。